■はじめに:金属床義歯とは?保険適用外の選択肢について解説します
金属床義歯は、入れ歯の床(しょう)と呼ばれる部分に金属を使用した特殊な入れ歯です。保険適用で作製できるレジン床義歯に比べて様々なメリットがありますが、費用は高額になります。ここでは、金属床義歯の特徴や種類、メリット・デメリット、そしてどのような方におすすめできるかについて、初めて金属床義歯を検討される患者様向けに分かりやすく解説します。
■金属床義歯の構造と保険の入れ歯との違い
- 入れ歯の基本的な構造:歯ぐきに乗る「床」、残っている歯に固定する「クラスプ(バネ)」、人工の歯から構成されます。
- 金属床義歯の主な特徴(薄さ、強度、熱伝導性など):床の部分が金属でできているため、保険の入れ歯(レジン床)よりも非常に薄く、丈夫に作ることができます。また、熱を伝えやすいため、食事の温かさや冷たさを感じやすいという特徴があります。
- 保険適用内のレジン床義歯との比較:レジン床義歯はプラスチック(レジン)でできているため、厚みがあり、熱を伝えにくい性質があります。金属床義歯はこれらの点が改善されています。
■金属床義歯に使われる主な金属の種類とそれぞれの特徴
- コバルトクロム床:最も一般的に使用されている金属床義歯の素材です。強度が高く、比較的費用を抑えられるというメリットがありますが、やや重く、金属アレルギーの可能性がゼロではありません。
- チタン合金床:非常に軽く、生体親和性が高いため金属アレルギーのリスクが低いのが特徴です。費用はコバルトクロム床より高くなります。
- 貴金属床(金、白金など):金や白金などの貴金属を使用した金属床です。非常に適合性が良く、金属アレルギーのリスクが極めて低いのが特徴です。費用は最も高額になります。
- 各金属素材の特性比較(費用、アレルギーリスクなど):それぞれの金属には一長一短があります。歯科医師と相談し、ご自身の体質や予算、求める機能性に合わせて素材を選択することが重要です。
■金属床義歯を選ぶメリット:快適な入れ歯生活へ

- 薄くて違和感が少ない装着感:床が薄いため、お口の中での圧迫感が少なく、舌の動きもスムーズになりやすいため、話しやすさや快適性が向上します。
- 食事の温度や味を感じやすい:金属が熱を伝えるため、食事の温かさや冷たさを感じることができ、より自然な食事を楽しめます。また、床が薄いことで味を感じる舌の感覚を妨げにくいとも言われています。
- 丈夫で長持ちしやすい:金属は強度が高いため、割れたり変形したりしにくく、丁寧に扱えば長く使用できます。
- 安定性があり、顎の骨への影響を抑える可能性:しっかりと顎の骨にフィットするため、入れ歯が安定しやすく、これにより噛む力が効率よく伝わり、顎の骨が痩せるのを抑える効果が期待できます。
■金属床義歯のデメリット:知っておくべき注意点
- 保険適用外による費用の負担:金属床義歯は自費診療となるため、保険の入れ歯に比べて費用が高額になります。歯科医院によって費用は異なりますので、事前に確認が必要です。
- 金属アレルギーの可能性と対策:ごく稀に金属アレルギーの反応が出ることがあります。アレルギーが心配な場合は、事前に金属アレルギーの検査を受けることをお勧めします。チタンや貴金属はアレルギーのリスクが低いとされています。
- 修理や調整が難しい場合がある:金属部分の修理や調整には専門的な技術が必要となるため、歯科医院によっては対応が難しい場合があります。
- 見た目(金属部分)が気になる可能性:笑ったり話したりした際に、金属部分が見えてしまうことがあります。ただし、設計によっては目立ちにくくすることも可能です。
■金属床義歯とノンクラスプデンチャーの組み合わせ:見た目と機能性の両立

- ノンクラスプデンチャーの利点:金属のバネ(クラスプ)を使用せず、歯ぐきの色に近い特殊な樹脂を使用するため、見た目が自然で目立ちにくいのが特徴です。
- コンビネーション義歯の設計とメリット:金属床義歯の強度と薄さ、ノンクラスプデンチャーの見た目の自然さを組み合わせた義歯です。床は金属で薄く丈夫に作り、目立つ部分のバネをノンクラスプにすることで、機能性と審美性を両立させることができます。
- どんな症例に適しているか:特に前歯など目立つ部分に入れ歯が必要な場合で、かつ奥歯などには金属床の強度が必要な場合などに適しています。
■金属床義歯が適しているのはどんな人?

- 保険の入れ歯に満足できない方:保険の入れ歯の厚みや違和感が気になる方、食事をもっと楽しみたい方に適しています。
- 薄くて快適な入れ歯を求める方:お口の中での快適性を重視する方に最適です。
- 食事をもっと楽しみたい方:熱伝導性や味覚への影響を抑えたい方に推奨されます。
- 特定の金属アレルギーがない方:事前に金属アレルギーの検査を行い、適合する金属を選択できる方。
■金属床義歯を選択する際の注意点
- 歯科医師との十分な相談:金属床義歯には様々な種類や設計があります。ご自身のお口の状態やライフスタイル、希望を歯科医師にしっかり伝え、最適な義歯を選ぶための相談を十分に行いましょう。
- 費用について:自費診療となるため、事前に費用の見積もりを確認し、納得した上で治療を進めることが重要です。
- 定期的なメンテナンスの重要性:金属床義歯を長く快適に使用するためには、歯科医院での定期的なチェックとクリーニングが不可欠です。
■まとめ:ご自身に合った義歯選びのために
金属床義歯は、保険の入れ歯にはない多くのメリットを持ち、より快適で質の高い入れ歯生活を実現できる可能性があります。しかし、費用や金属アレルギーのリスクなど、デメリットも存在します。ご自身の希望やお口の状態に最適な義歯を選ぶためには、歯科医師とよく相談し、それぞれの義歯の特徴を理解することが大切です。この情報が、より良い入れ歯選びの一助となれば幸いです。
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